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小説 「ワッハ上方を作った男たち」

 本書の発刊に当たり、西川きよし師匠に「表紙題字と刊行に寄せての一文」、またイラストを成瀬國晴氏からご芳志を戴き、望外の立派な書として発刊することが出来た。

 今静かに日を閉じると、大阪の「お笑いの伝統の灯」を消すまいと、この「ワッハ上方」作りに必死に苦悩・苦闘したその時々の男たちが、目の奥底で鮮やかに蘇ってくる。
 
 上方演芸資料が時代の変遷とともに決定的に風化することを恐れ、その保存と、それを活かして新しい上方演芸の発展、振興に貢献する拠点の、「ワッハ上方」作りに奔走した男たちのことである。
 
 このドラマを書くきっかけは、すでに故人となられたが、その頃大阪府教育委員会の教育長だった友人の服部正敏氏との、さりげない会話からであった。
 
 「『蚊帳の中から片足出して、楠木正成これにありつ! 足利攻めるじゃないかいなー』、と言う台詞を知ってまっか」と訊くのである。
 
 漫才の巨匠・捨丸が、板の上で「鼓」打ちながら声高に喋くった名セリフだったのだという。演芸に疎い筆者は、寡聞にしてそのことを知らなかった。

 服部氏が府の東京事務所所長の頃、当時参議院議員だった西川きよし氏から、この捨丸の「鼓」を大阪府でなんとかしてくれませんか、との申し入れを受けたのが最初のキッカケだったと、服部氏が明かした。
 
 その「鼓」が、見るも無残な朽ち果て寸前の骨董品まがいになっていて、なんとか救って下さいと言うのが、きよし議員の訴えだったそうだ。
 
 元NHK政治記者の著者は、これまでに地方自治体のドキュメント小説を何編か手がけてきている。
 自治体の小説の何が面白いかと言うと、ある事業が役所内で起想されると、不思議なことに様々な経験と見識を持ち合わせた男たちが何かに導かれたように一堂に会し、それぞれ自己の美学成就を目指すかのように正に陶酔状態で、必死に挌闘しながら事業達成に邁進する姿があるからである。
 地域に根ざしている分、地方自治体の事業の方が、網を掛けるだけの広範な国のそれより遥かに興味深い。

 今回、この小説「ワッハ上方を作った男たち」は、この事業の意味と偉業を記録し、後世に残しておきたいというのが、著者のひとつの目論見であった。
 
「大阪のお笑いとは何ですか」と大阪人に聞くと、大阪のお笑いとは「伝続的な生活文化」であると同時に、「中央に対する反権」の意思表示でもあるとの答えが返ってくる。
 
 商売のまち大阪商人の機知が生み出した生活の知恵だというのだ。笑いがあれば、良好な人間関係をたちどころに築くことができ、中央にも向こうを張って難しいビジネスも笑いの渦の中で自然にまとめられる。
商売のまちならではの伝統文化だと、はっきり言う。
 
 そんな「お笑い」の集積である上方演芸を保存し振興する拠点を作ろうと、そのキッカケを作ったのは前述のの如く西川きよし師匠だが、その後は桂米朝師匠、いとし・こいし師匠、勿論西川きよし師匠らの名人演者、それにNHK大阪放送局・在阪民放テレビ局・新聞社が前例のない結束を見せて取り組んだことが、この歴史的
事業を見事に結実させたと断言していいだろう。 

 物語は、「キッカケから、名人演者の奮闘」、「がんどう返し・M建設の悲劇」、「吉本興業中邨社長の夢」、「模索の設計」、「ついに開館」といった具合に、男たちの執念の軌跡を展開させている。

 今や世界的となった上方文化の象徴・上方演芸の姿に少しでも迫りたいと思ったが、上方演芸の「芸の奥義」は深すぎて書き綴る
ことは不可能だった。
 でも、掛替えの無い上方文化の象徴・上方演芸の資料保存の大切さには、想いを込められたと考えている。
 この小説の二つ目の狙いが、そこにあったからだ。 
 
 「ワッハ上方」は、いま厳しい経営局面に立たされている。
 財政難を理由に文化の切捨てが、何の感慨もなく、いとも冷徹に断行されている実態が、わが国のいたる所で散見される。
 大阪府でもその議論が飛び出して久しい。
「お金と文化」のどちらを優先させるかなどの議論が、いかに愚昧に等しいものかは一考にも値しない。

 「ワッハ上方−上方演芸資料館」の課題は、その意味でも前途多難である。が、その糸を解きほぐす端緒が次第に窺えるきざしが見え始めている。
 今後はそれこそ経営感覚に優れ、かつ高潔なリーダーシップによる果敢な決断と行動が伴えば、存外急転直下解決する方法もないではない。
 そのことも拙著の「あとがき」の中でふれている。

 本書の帯には、西川きよし師匠と共に、いとし・こいし師匠を師と仰ぎ、04年度の芸術祭賞を授賞されたはな寛太師匠にも紹介文を頂いた。

 この「ワッハ上方を作った男たち」を脱稿した直後から、もう一つの大阪文化である浪速商人(あきんど)に関わる小説「大阪産創館」に取り組み、「雑誌ジュピター」に連載している。
 また新刊書としてお目にかかる日が、いつの日か来ると願っております。


   著者   毛馬一三 

   題字   西川きよし師匠
   イラスト 成瀬 國晴氏
   出版元  西日本出版社

   判型B6判並製320ページ
     定価1500円(税別)
    ISBN4-901908-10-3

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